シベリウス交響曲第3番のトランペット
ホルンが活躍するいっぽう、トランペットは⋯⋯
シベリウスが5年前(1902年)に書いた交響曲第2番では、トランペットを活躍させすぎたので(フィナーレなど)反省したのか、それともオーケストラから苦情が出たのか、3番ではトランペットが息抜きできるように配慮してある。
この交響曲ではトランペットが目立った旋律を担当することはいっさいなく、金管の聞かせどころはすべてホルンに譲っている。
たとえば第3楽章。
楽章の後半、246小節目から四拍子の力強く美しい弦楽のコラールが始まり、木管とホルンが加わってしだいに盛り上がり、続いてはホルンの重奏が少し変形したコラールを担当し、さらに木管群がコラールを輝かしく奏で、弦の重奏が三連符に変わって力を増し、そこに木管がかぶさって進み、そのまま340小節目「Piu energico」の終結に突入する。
ここまでの94小節間で、トランペットの担当は7小節だけである。ちなみにホルンの登場は74小節で、ほとんど休みがない。
計375小節からなる第3楽章で、トランペットの出番は31小節にとどまる。ホルンは255小節。またトロンボーンは54小節と、トランペットに次いで少なめだが、終結部ではコラールの旋律を勇壮に担当する主役である。
計276小節の第1楽章では、トランペットの出番は58小節、197小節の第2楽章では、トランペットは全休である。
またこの交響曲全体を通じてトランペットが担当するのはほとんどが中低音域で、ホルンやトロンボーンの厚い響きに埋もれて、この楽器特有の輝かしさが発揮されることはない。
(参照スコアは、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社の新全集。)