シベリウス交響曲第7番のトロンボーン主題
第1トロンボーンに印象的な主題が現れるが、この旋律が中間部と終結部にも再現する。
導入部に続き、九部に分割された弦の重奏による典礼風の曲想がしだいに高揚し、神々しいトロンボーンの主題が現れる(60小節目:A)。
中間部のスケルツォ的な部分で、荒れ狂う弦の六連符に乗って、トロンボーンが少し変形された主題を朗々と提示する(222小節目:B)。
全曲の終結部に入る締めくくりとして、トロンボーンが主題を回想する(476小節目:C)。
2度目の主題(B)は、Aとは調性が違い(ハ短調)、リズムも変形されている。
最後の回想(C)は、Aとほとんど同じであるが、「レ-レ」がタイで連結されている点が、Aとの大きな違いである。この「タイ」への変更は、Bも同じ。
ところが、演奏者によっては、CをAと同じリズムに変更することがある。たとえば以下の演奏。
・ビーチャム&ヘルシンキ・フィル(1954年6月)
(*ただし、同年9月のロイヤル・フィルとの演奏では楽譜どおり)
・マゼール&ウィーン・フィル(1966年)
・ガラグリ&ドレスデン・フィル(1970年?)
・ムラヴィンスキー&レニングラード・フィル(1977年)
・アブラヴァネル&ユタ響(1977年)
・マゼール&ピッツバーグ響(1992年)
・リントゥ&フィンランド放送響(2015年)
これらの演奏のように、タイを無視してAのリズムに揃えるほうが、旋律が明確になって力強さは増す。
変わり種は、シクステン・エールリンク&ロイヤル・ストックホルム・フィル(1952年)。
最初の主題の提示(A)を、「レ」をタイで連結したCのリズムに変えている。
中間部(B)にもタイがあるので、多数に従って統一したということか。
なお、ブライトコップフ&ヘルテル社の新全集(2010年)にもトロンボーンのリズムに関する注記はないので、異稿は存在しないようである。
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