シベリウス交響曲第6番のティンパニー

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シベリウスの管弦楽曲(交響曲含む)はティンパニーが大活躍する。

たとえば交響曲第2番の終楽章の後半などは、ほとんど休みなく強奏の盛り上がりにティンパニーが貢献し、舞台の最後列で大きな身振りで連打する奏者の姿も「絵」になる。
いっぽう交響詩「大洋の女神」(Op.73)は2人のティンパニー奏者を必要する大編成の曲であるが、ティンパニーの強奏は最後の最後だけである。そこに至るまでは、精妙な管弦の響きに微妙な陰影を与える裏方に終始する。
静寂を際立たせるためのテインパニーの活用はシベリウスの特徴で、交響曲第1番の2楽章や、第3番の2楽章などでこのような用法がすでに確認できる。

さて、交響曲第6番の終楽章のテインパニーはというと、計256小節のうちティンパニーの担当は80小節を超える。
この楽章は、49小節目から勢いを増す主部に入るが、テインパニーは控えめながら曲に推進力を与え続けている。
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いっぽう、主部に至るまでの導入部と、主部に続く終結部は、きわめて静謐な楽想を基調とするが、そのような箇所でもティンパニーが効果的に使われている。
特に、終結部のヴァイオリンとヴィオラによる最弱奏を支えるティンパニーは、まさに「静寂のためのティンパニー」である。
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ティンパニーに着目すると、オッコ・カムがラハティ交響楽団と録音したCD(2014年、BIS)のティンパニーは素晴らしい。やや乾燥した音色で、リズム感も絶妙で、ついティンパニーばかり聴いてしまう。

いっぽう録音によっては(あるいは演奏によっては)せっかくのティンパニーがよく聞き取れないものもある。
また、よく聞こえなくて幸いだったというべきか、とんでもない演奏ミスをそのまま製品にしたCDもある。
比較的評価の高い、ネーメ・ヤルヴィとエーテボリ交響楽団の旧録音(1983年、BIS)である。
第4楽章では、ティンパニーが55小節目で入りそこない、そのまま2拍遅れで叩き続け、70小節目でようやく立ち直っている。いくらなんでも奏者自身はミスったことに気づいていたと思うが、言い出せなかったのだろうか。困ったものである。
なお、同じオーケストラとヤルヴィの再録音(2005年、DG)では、ティンパニーは間違うことなく演奏している。

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このページは、彭祖老師が2017年7月16日 15:54に書いたブログ記事です。

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