シベリウス交響曲第7番の終わりかた
作曲者最後の交響曲は,巨人の仕事の集大成にふさわしく圧倒的に盛り上がって雄大に終わるのか,それとも……
交響曲第7番の最後の4小節は下の譜例(木管楽器は省略)。
(ブライトコップフ&ヘルテル社の新全集によった。)
交響曲第7番は,521小節目の属七の和音を受けて,主和音を基調とする最後の4小節に入る。
重厚な音の壁が築く圧倒的なクライマックスで雄大に曲を閉じるのであれば常識的である。交響曲第2番のように。
しかし7番では,そうはならないような仕掛がある。
クレッシェンドしながら力を増す弦のユニゾン(シ--ド)を尻目に,主和音を構成するトランペットとトロンボーン,それに根音のコントラバスとティンパニーが急速に音圧を弱めるのである。
しかも,次第にテンポを落として粘るわけでもなく,最後の音にはフェルマータもない。フォルティッシモの指示のある弦のドは,たった二分音符の長さで,ストンと曲を閉じるのである。
最後の和音は,急速に響きが軽く薄くなって,ふわりとあっけなく終了。これがシベリウスの意図である。
最後に休符が書かれていることから,最後の音を長く引き伸ばしてはいけないこともわかる。
定番の誉れ高いベルグルンド(ボーンマスSO,ヘルシンキPO)や,サカリ&アイスランドSO,サラステ&フィンランドRSO(1993)などは楽譜に忠実である。
なかでも,オッコ・カム&ラハティSO(2013年)の強弱の表現は繊細で,しみじみとした余韻が残る名演である。
だが,楽譜どおりの演奏では結末が物足りないと考える指揮者もいるようだ。
最後の音を引き伸ばしたり(ビーチャム,ストコフスキ,カラヤン&ベルリンPO,ムラヴィンスキーなど),金管のデクレッシェンドの指示を無視したり,いったん弱まった金管群を最後にクレッシェンドさせて力づくで盛り上げたり(バーンスタイン&ウィーンPO,C.デイヴィス),ティンパニーだけ弦に合わせてクレッシェンドしたり(オーマンディー,ロジェストヴェンスキー),作曲者の指示に従わない演奏がいくつかある。
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