シベリウス交響曲第4番の初稿
1911年に完成した交響曲第4番は初演後に手が加えられ,現在演奏される最終稿が定まった。
第2楽章は初稿と最終稿で大きく異なっている。特に後半部分は「前衛的」ともいえる展開に驚かされる。最終稿は初稿に比べるとかなり穏当である。初稿は BIS の「全集」(BIS-CD-1933/35)で聴くことができる。
いっぽう第3楽章の初稿と最終稿はおおまかに言えば「同じ曲」である。
どちらも嬰ハ短調,4分の4拍子,Il tempo largoで,サイズ(計101小節)も同じ。
では何が違うか。楽器の割り振りが違う,つまり「音色が違う」のである。ピアノで弾くなら,ほとんど区別がつかないだろう。
最後の14小節(88-101)を例にとる。
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2小節からなる動機が6回繰り返されるが,初稿では (A)オーボエ→(B)クラリネット→(C)オーボエ→(D)クラリネット→(E)チェロ→(F)コントラバスと受け継がれる。
最終稿ではこのリレーが(旋律にごくわずかの変形をともないつつ),(A)フルート→(B)クラリネット→(C)第1ヴァイオリン→(D)第2ヴァイオリン→(E)チェロ→(F)コントラバスと受け渡される。
初稿は木管の二往復の対話を経て弦に移行する設計であるが,最終稿では,清澄な音色から重く沈んだコントラバスへと階段を一段ずつ下るように改訂されている。
第3楽章の初稿はまだ聴く機会がないが,楽譜はブライトコップフ&ヘルテル社の新全集に収められている。
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